著書紹介

ムジカノーヴァ2011年4月~10月号
ムジカノーヴァ2011年4月~10月号

♪✨育てる

急がないで~!

最近、家庭菜園や、ガーデニングにはまってらっしゃる方も多いのでは・・・・

私も、ときどき、花壇に種を蒔いて、「いつ、芽が出るかしらぁ~~(*^_^*)」と楽しみに、お水をあげたりします。

お水をあげるとき、心の片隅で「無事に芽がでますように・・・」などと優しい気持ちで思いながら。

きっとみなさん、同じですよね。

「きのう、お水あげたのに、なんで、今日になっても、芽が出てこないのよっ!!」なんて怒る人いませんよね。

また、赤ちゃんがお腹にいる時、「すぐにでも大きなって、はやく生まれてよっ!」なんて思う人は誰もいないでしょう。

種が、芽を出すまで、赤ちゃんが「オギャ~」と産声を上げるまで、愛情を絶やさずに、丁寧に時期が来るのを待ちますね。きれいなお水を注いだり、お腹の赤ちゃんに話しかけたりしながら・・・・・(*^_^*


「育つ」過程は、時間がかかるんです。

そこを、うっかり忘れてしまうと、とても悲しいことになります。

たとえば、子供の場合、「昨日、言ったでしょ!!なんで、できないのっ??!!」と怒られたって、「出来ないものは出来ない」し、1回でできない事のほうが多いのです!



大人になったその人は、自分がすべて1回で出来たと、勘違いしているけど、出来なかったことを忘れてるだけ。

今、大人になって、すぐにできるから、子供もすぐにできないと、自分がいや!・・そうゆうことなんですね。

あんなに、お腹の中にいる赤ちゃんに「ゆっくり、元気に育ってね!」とほほ笑んでいた気持ちを思い出しましょうよ。

ピアノのレッスンでも同様です。

「前回、教えたじゃない?!聞いてなかったの?」(いえいえ。聞いていたけど、ストン!と落ちていなかったのです)「家でちゃんと練習してやる気マスターしてきてね、ってお約束したじゃない?」(練習方法がうまく、伝わっていなかったか、一生懸命やったけど、まだ、芽が出なかったのですね)

最後には「やる気あるの?」・・なんて言われたら、「やる気」の芽が、まだかろうじてあったとしても、もう、もみくちゃにされたも同然。  なんの為のレッスンなのか、わからなくなります。

もう1「育つ」過程は、時間がかかるんです。

その「育つ」時間を、丁寧に、愛情たっぷりにいかに使うか??・・・そこが大切なのです。

質の良い時間を!

育つ」のに、時間がかかるから、と言って、ただ時が来るのを待っているだけでは、「育てる」ということにはなりません。

草花だったら、きれいな水と、太陽の光も必要。

生徒さんには、音楽のエッセンスを、シャワーのように降り注ぎ、私たちの「笑顔」と「愛情」で、包み込む時間が大切だと思います。

小さいお子さんには、樹原涼子先生が提唱している「2段階導入法」が、とても大切だと思います。

「どうしてできないの?」ではなく、出来ない原因を見極めて、11つ丁寧に取り上げ、一緒に出来る喜びも共有していく。「塵も積もれば山となる」です。

それは、技術的な事も、意欲の面でも同じです。

技術の面で言えば、「プレピアノランド」などは、とても細かく大切な要素が含まれていて、素晴らしいと思います

意欲の面では、11人違う「個性」を持っているので、教本通りにやろうとしても、うまく乗ってこないこともよくあります。

だから、よくその子を見るのです。

レッスンは、その子のためのものです。
指導者が、指導案通りにこなすことがいいレッスンではありません。

その子の心にどんな小さなことでも、心に残ることを伝えられればいいと思います。

「今、その子がどんな事を考えているのか?」
「何に興味があるのか?」
「瞳は、いつ輝いたか?」

 

いつでも、その生徒から目を離さずにいる事が大切です。

 

 

・・・・ここで、思い出しましたが、レッスン中、先生方はどこを見ているでしょうか?

私は、いつも通り一生懸命レッスンをしているつもりでしたが、ある時、気がついたことがありました。

ピアノを弾いている生徒と一緒に、私は、生徒と同じ楽譜をずっと見ていたのでした。

「楽譜の音と合っているかしら?」「書かれているアーティキュレーションは、注意しているかしら?」
 
「先週、アドバイスしたことはできているかしら?」・・と、チェックしていたのでした。

その子がどんな表情で、どんな気持ちで弾いているのか?また、タッチや、体の使い方で無理はないか?など、
 
もっと見てあげなくてはならないことがいっぱいあったのに・・・・

・・でも、気がついてよかった。と思いました。


それから、生徒がピアノを弾く時は、まるごと生徒を見るように心がけました。
 
すると、生徒の気持ちがよ~くわかるようになりました。

「あ、ここ苦手なんだ。顔がちょっと曇った。」
 
「なんて、優しい顔して弾いているんだろう。しっかり自分の音がきこえてるんだ」・・・
 

 
私が変わっていくのと並行して、生徒達も変わっていきました。

 

「ここのところ、○○ちゃん好きでしょ?!すごく楽しそうな音で、先生もワクワクしちゃったよ。いい表情していたね!」などというと、びっくりした顔で「・・なんでわかるの??そう。ここ大好き~(*^_^*)」となります。

心と心がつながって、安心してレッスンが受けられるって素敵だと思います。

同じ時間、レッスンに使うのです。
 
その子の栄養になる「質の良い時間」にしなくてはいけませんね。

1人1人の個性を尊重したレッスン

 

大昔の私が受けていたレッスンでは(ほとんど、昔はそうだったと思いますが)『先生が絶対!!』・・・・先生の言うとおりに弾かなきゃいけないし、先生の言うとおりに弾ければオッケー!!

だから、先生から合格のマル○をもらうことが、私の目標でした。

自分の意思など反映しようとも思わず、作った作曲家の想いを(楽譜通りに)間違えずに、先生のおっしゃるとおりに弾く事が大切だと、子供の時は、ずっと思っていました。
 
「指示待ち症候群」です。

ピアノは、パラパラと指が早く動くことがいいこと(上手)。楽譜に書かれていることさえ、間違えなければ最高!と、信じて疑わなかった私でした。

 でも、人を「教え」「育てよう」と思い始めてから、やっと気がついたのです。
 1人1人の個性を尊重し、心が動くレッスンをしていきたいと、本気で思いました。


 音楽を「教え」「伝える」前に、

柔らかい心を育て、個性を伸ばしていこう!

・・・そう思ってレッスンしています。